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オートクチュールでの仕事
贅沢に時間を使い学んだ日々

第10回:上杦真由美氏

mamius高田:まずはオートクチュールを選んだのはなぜですか?

上杦:ドレスをやりたかったんです。ドレスがとにかく好きだったんです、それでオートクチュールを選びました。中村ノブオさんのアトリエだったのですが、ちょうど紀子様がご成婚される時でしたので、皇室のドレス制作に関わることができました。もちろんアシスタントとしてですが。

高田:アシスタントでも、そのプロジェクトへ関われるのはすごいことですよね?!

上杦:皇后さまのドレスのお直しなんかもやりました。

高田:わっ、それは貴重な体験でしたね!

上杦:はい、ほんとに貴重な経験でした!赤坂御所に入ることなんて、ありませんからね。

高田:オートクチュールでは、皇室はじめ、いろんな方がいらっしゃったのですか?

上杦:あとは宝塚の女優さんとか、普段会えない方ばかりでしたね。私はまだアシスタントでしたので、お名前も聞いてはいけませんでしたし、お針子さんとして仕事していましたね。

高田:オートクチュールって、どんな世界なんですか?

上杦:とにかく時間を贅沢に使わせてくれるんです。例えば、リボンひとつに一日かけて完璧なものを作り込むんです。とにかく試行錯誤しながら、ドレスにあうリボンをつくるんです。「これでよし!」と先生に言われるまで、とことん悩み、考え、つくりこみましたね。あとにもさきにも、そこまで時間をかけて取り掛かったのは、その時だけかもしれませんね。

高田:一日でやりなさい!とか言われるんですか?

上杦:時間も言われないんです。「リボンをつけておいて。」という具合に。ですから、小さいものをつけるのか、大きいリボンにするのかなど、自分の感性でつくります。

高田:えっ、それは何も細かいことは全く指示されずに、ただ「やりなさい!」だけなんですね?

上杦:そうです。逆にそれはものすごくありがたかったですね。最近おリボンのお洋服がでていますが、ホント、リボンに失礼だと思いますね! リボンは奥が深いんです、つける箇所や生地の地の色で全く違いますから。あれは、本当にありがたい経験でしたね。

高田:そうですね、スタッフに、時間的な余裕も与えてくれる経験なんて、そうありませんよね。

上杦:ですから、オートクチュールの場合は、「いついつまでにやりなさい!」というわけではないんです。「いい」「駄目」の二つに一つだけなんです。オートクチュールというのは、ある程度ざっくりした納期はありますが、基本的には「いいものが出来てから納品」なんです。ですから、時間をとても贅沢に使います。

高田:そういうものなんですね、さすがオートクチュールです。リボンに関しては、「駄目!」としか言われないんですよね。ここを直しなさいとか、色を変えなさいとか、具体的には何も言ってくれないんですか?

上杦:そうです。だから怖いんですよ、メインのデザイナーの先生が、「ダメ」「ちょっと違うね!」と言って、それ以上何も言わないんです。自分としては、「違うのはここかなー」「こっちかなー?」なんていろいろ考えながら、作り直すんです。ですから、そのやり直しの時間を贅沢にいただいた、ということですね。

高田:それは、ありがたいことですね。しっかり考えたり、作り直す時間を与えてくれるんですから。

上杦:ホントにありがたかったです。そもそもやらせてくれること自体ありがたかったです。生地も素晴らしいものでしたし。 

妥協せずに、自分が納得して最終的に商品としてだすことに
自分できっちり「いい」と判断することを学んだ

mamius上杦:デザイナーの先生方も、ある程度スタッフを見て指示しますから、難しいなと思うスタッフにはやらせませんでした。

高田:でも、そこまでいくには早かったのでは? お針子さんから始まり、リボンとかパーツをつくらせてもらえるまでは。

上杦:2年程度でしょうか。入れ替わりも早かったですけどね。

高田:かなり競争もあったのでは?

上杦:競争はないんですよ。選ばれるか、選ばれないかなんです。

高田:わっ、それも厳しい世界ですね。当り前のことなのかもしれませんが・・。

上杦:選ばれる、というか、スタッフをすごーく見ているんです。

高田:では、技術だけではなく、感性とか、デザイン力とか、そういうものをよくウォッチしているんですね。

上杦:そうです、ものすごく見ているんですよね。すごいな、と思うのは、全く口だししない事です。私なんか今アシスタントによく口だししてしまいます。こうやって! ああやって!と自分の思い通りにやらせようとしてしまうんです。でも、オートクチュールの先生は一切口だしせずにやらせるんです。そして、その結果を見て、この子はオートクチュールを理解しようとしている・していない、を判断しているんです。

高田:なかなか根気のいることですね、私もつい口だししちゃいそうです。

上杦:オートクチュールのやり方、色の使い方とか。裏地にしても、通常同形色でまとめますが、わざとはずした色というか、反対色を使ったりするんです。そういうのが感性というか、見て覚えて、アウトプットできるようになるかどうか、そういうところをじっくり見ているんです。ですから、それは自分なりにかなり意識していましたね。

高田:逆に厳しい状況ですね。若いころは、オフィスで上司にガンガン言われたり、指示されて学んでいくことも多いですから。

上杦:何にも言ってくれないんです。うるさくも言われませんし。

高田:そういう意味では競争というよりは、学ぼうと必死なんですね。

上杦:そうですね、ものすごく厳しかったと思います。あるとき先生に言われたことがありました、「オートクチュールであなたは伸びるけど、ある程度いったら止まるから気をつけなさい!」と。「感性である程度まではいくけれど、勉強しなかったら、そこで止まるわよ!」という意味だったんです。

高田:感性を磨くことも大事だけど、常に学ばなくてはならない世界。なんだかドキッと!としますね。スタッフとしてはかなりの緊張感がありますね。

上杦:怖いですよ、だから。とにかくそんなこと言われない様に頑張りましたね。

高田:そのオートクチュールでは7年間お勤めされたんですね。そこで学んだことは、個人に対してのものづくりに活きているんでしょうね。

上杦:人に対してというよりは、モノに対してじゃないですかね。これでOK!と、判断するジャッジの仕方を学びましたね。「いい」「悪い」というのは、最終的に自分で決めるもの。大手の場合は、たぶん、売れるもの、社内で大勢の人が「いい」と選んだものを最終的につくります。妥協せずに、自分が納得して最終的に商品としてだすことに自分できっちり「いい」と判断する必要がある、そういうことを学びましたね。

高田:他では学べないことですね。

上杦:そうですね。オートクチュールはドレス中心でしたが、その他スーツとか、社交の場で着用するものが多く、やはり年配の方が多かったんです。次第に、一般的に着る服、買える服をやりたいな、と思うようになりました。自分はオートクチュールは買えませんでしたし。

( 前半終わり)

後半について

後半は、量販店での経験、自分ブランドをはじめるきっかけ、一人で立ち上げ・一人で作り・営業の日々など、また洋服に対する熱い思いをおうかがいしました。「これからやりたい夢!」に関してもおうかがいしましたので、どうぞお楽しみに!

#2008年9月12日更新:対談の後半をアップしました。こちらからどうぞ

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